薬剤の種類と特徴
気をつけていても病害虫の被害から逃れることはできません。病害虫は発生の初期段階で対処するのが一番です。植物が出すサインを見逃さず、初期に発見して被害が広がる前に対処すれば、薬剤を効果的に施すことができ、使用量も少なくてすみます。
薬剤には病気を防ぐ「殺菌剤」、害虫を退治する「殺虫剤」があります。病気なのか害虫なのか防除目的をはっきりさせて薬剤を選びますが、病害虫の種類、あるいは使用する植物の種類に応じたさまざまな製品があるので、薬剤の特徴を知り最も効果のあるものを選ぶことが大切です。
なお、野菜や果樹は栽培しているものに使えるかどうかを必ず確認し、家庭菜園でも使用時期と散布回数などを守って正しく散布します。
病気を防除したいときの薬剤
植物の病気には有効な薬剤がないものもあります。そのためにも早期に発見し、ほかの株に伝染させないようにしなければなりません。
病気にかかる前の予防に使うときは、植物全体を覆って病原菌の侵入を防ぐ「保護殺菌剤」を散布します。病気にかかってしまったら「直接殺菌剤」を散布しますが、病気の発生初期に散布することが大事です。
害虫は殺虫剤、病気は殺菌剤と薬剤が違う。防除目的を決めて選ぶことが大切です。
・保護殺菌剤
発生しやすい病気を予想して予防薬として使いますが、ほとんどの殺菌剤はこの効果があります。
・直接殺菌剤
有効成分が植物の中に浸透して移行し、組織内部に侵入した病原菌に作用して刹滅させる。
・薬剤のいろいろ
防除したいのが病気か害虫かによって、薬剤が異なります。ラベルを確認して害虫には「殺虫剤」、病気には「殺菌剤」を選び、正しく使うと効果が上がります。
害虫を防除したいときの薬剤
害虫の種類はさまざまですが、すぐに退治したいなら、害虫に直接かける接触剤を選びます。殺虫効果を長く持続させるときは、浸透移行性剤を株元や茎葉に散布します。
ナメクジやヨトウムシなど夜行性の害虫には、においでおびき寄せ、食べさせて退治する誘刹剤を選びます。
・誘刹剤
昼間は隠れていて夜間に食害する害虫に効果を発揮します。加害される前に予防することもできます(ペレット剤)。
・接触剤
希釈せずにそのまま利用できるスプレー剤やエアゾール剤は、多量の散布には向かないが、的を絞った使い方ができます(スプレー剤、エアゾール剤、乳剤、液剤、水和剤があります)。
・浸透移行性剤
株元や植え穴にまいたり、植物全体に散布します。1度まけば2〜3週間効果が持続するので、害虫の発生予防もできます(粒剤、スプレー剤、液剤、水和剤があります)。
手軽に使えるスプレー剤とエアゾール剤は、どこが違う?
どちらも薄めず(希釈せず)にそのままさっと散布できるので、手軽に使えて便利です。
スプレー剤は、ノンガスタイプですから近くから散布しても、植物が冷害を起こす心配はありません。薬液が葉先から滴り落ちる程度にかけます。
ボタンを押して使うエアゾール剤は、近くから散布すると冷害を起こすため、植物から30㎝以上離して散布します。また、流れるほどかけると薬害を起こすので注意しましょう。
薬剤散布のポイント
薬剤を使用する時は必ずラベルや薬品の説明書を読み、使用方法や散布の注意点を確認します。近所への配慮もし、飛散などによって思わぬトラブルなどが生じることのないように、散布時には十分に注意を払いましょう。
日中の日差しが強い時は薬害が出ることがあるので散布を避け、風のない朝夕の涼しい時に作業します。
薬剤散布は予防の意味もあり、病葉や害虫のいるところだけでなく、葉裏や株元にも散布します。細かい霧がうっすらとかかる程度で、スプレー剤と違い薬液が滴り落ちるようでは多すぎです。なお、散布は後退しながら行います。前進しながらでは、散布液の中に自分が入っていくことになります。作業が終わったら手足や顔などを石鹸で洗い、うがい、洗眼をしましょう。
薬剤のまぜ方
原液に触れないように注意して混合しますが、ラベルをよく確認して記載された希釈倍率を守って薄めることが大事です。薬剤が余らないように必要量をその都度作るようにしましょう。
・水に溶かす薬剤と用具
散布する面積が広かったり、植物が多い場合は、水で薄める薬剤が最適です。少量の薬品で大量の散布液が作れるので経済的です。
1、大袋はスプーンで計量する。
2、均一に混ざるように展着剤を加え、少量の水で練ります。
3、所定量の水に薬剤を加えてよく混ぜます。
散布時の注意ポイント
・薬液が滴り落ちるようでは多すぎます。
・洗濯物はとりこんでおきましょう。
・葉の裏からも散布しましょう。
・薬剤散布時に用意するもの
薬剤散布を安全に行うために用意したい農業用マスク、メガネ、手袋、帽子。
・薬剤散布時のスタイル
薬剤の散布時には、農薬用のマスク、ゴーグル、手袋、長袖、長ズボンを着用し、できるだけ肌の露出を抑え、薬剤を浴びないようにします。
薬液の濃度を濃くすると効果が高まる?
水和剤や乳剤、液剤は、水で薄めて使用する薬剤です。よく効くようにと薬量を多くして濃度を高めても、効果が高まることはありません。かえって葉に斑点が出たり、黄色く変色して枯れるなどの薬害が出ます。
反対に、薄めすぎると十分な効果が得られません。分量は正確に測り、希釈倍率を厳守しましょう。
また、水で薄めた薬液は保存がきかないので、必要な分だけ作るようにしますが、残ってしまったら庭の隅に浅く穴を掘り、その中に流して埋め戻します。薬剤成分は土壌微生物によって分解されます。